遺された、たった一枚の写真

「あの子が帰ってきた」その写真を見た年老いた母親は、ただそれだけを呟き涙を流し、それ以上の言葉は発しなかった。

 約50数年前、特攻隊員として召集された19歳の一人息子の記憶も薄れていく中、たった一枚だけ遺された写真も茶色く変色し、その後は顔の表情も分からぬほど消えかけていた。

 

  唯一の息子の写真が消えて無くなってしまう恐怖、どうにもやり切れなく感じて失望していた時、テレビで消えかけた写真が鮮やかに蘇ると放送していた。

 前にデジタル再生という話を聞いて、依頼してみたが、そこに返って来た写真は息子とは似ても似つかぬ別人の顔があった。

 今度は本当に直るのか、半信半疑で依頼することにした。

待つこと数週間、そこには凛々しいあの子の顔が再現されていた。その写真を見た母親には黒白写真化学修復の素晴らしさを伝える、その一言しか要らなかった。

その涙の先には、ずっと息子と一緒に居られるという、平安を得たのでしょう。

子供の頃に写してもらった写真

私が小学生の時、友達が東京へ引っ越すことになった。

 五人の友達が神社の前に集まり、写真好きのおじさんに撮って貰った。

 それから数十年、友達ともバラバラになり、思い出は記憶と残された写真だけ。

 そんな写真も、何が写っているのか分からない程に消えてしまい、そこに写された友達もみんな亡くなってしまった。

 思い出の写真は残っているが、そこに写る顔は消えかけてしまっていて、見ることが出来ない。

 藁にもすがる思いで、黒白写真化学修復へお願いしてみた。

劣化が激しく修復できるか分からないが、一応はオーダーを受けてもらえた。

そして数週間後、作業は進んでいるが、思っていた以上に劣化が厳しく、これ以上の作業を行ったら画像を失うことも考えられると連絡が来た。

やはり完璧な修復は出来なさそうだ。

その後、郵便で修復された写真が届いた。

そこにはあの懐かしい小学生の時の自分や友達の姿が現れていた。完璧に修復出来ないからと言われて、諦めていたがそこには懐かしい皆の顔が写っていた。

自分一人が遺されてしまったが、修復された写真を見ていると、あの時のことが鮮やかに蘇り、とても嬉しい気持ちにる。

今は私の心を豊にしてくれた、写真化学修復に感謝の気持ちしかない。

 

 

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