一ノ瀬泰造の遺したもの 〜被弾したフィルム現像までの実験と解析〜

<矯正劣化フィルムによる現像テスト>

ISO640で撮影したトライXフィルム。
D76による+1増感現像。
当然のことながら撮影した全てのコマは正常である。

S1V1(自家調合による2浴現像液)による現像。
撮影後カメラの裏蓋を開け電灯光を直接10分間当てその後現像。
前8コマは正常の画像で、後ろから4コマは光カブリの影響が出た。
選択現像法と光カブリ防止剤の効果がある。

S2V2(S1V1の発展型の4浴現像液)による現像。
撮影後のフィルムを強制劣化30年分し、直射日光を3秒間当てその後現像。
劣化により膜面故障を起こし画像が崩れている。
潜像退行による感度の低下が見られる。

S3V2(S2V2の改良で強力増感現像液)による現像。
撮影後のフィルムを強制劣化30年分し、直射日光に30秒間当てその後現像。
光カブリは良く押さえているが、もう+1/2程度の増感が必要。

T-MAX RS による+3増感現像。
撮影後のフィルムを強制劣化30年分し、直射日光に27分間当てその後現像。
光カブリと化学カブリの影響で、フィルム全体が真っ黒になってしまった。

S4V2(第1液にスーパープロドールの3/4濃縮液に添加剤を加え、2~4液はS3V2の改良の超強力増感現像液)による現像。
富士フィルム開発センターにて撮影。強制劣化30年分し、直射日光に27分間当てその後現像。
膜面の故障もなく、光カブリと化学カブリも良く押さえ、前半のコマは正常に近い画像を再現している。

9のフィルムの14コマ目の画像。
ベタ焼きでは真っ白で、プリント時に多量の露光を与えても通常の現像では撮影画像がほとんど残らないので、全体がグレーになってしまう。

Bのフィルムの1コマ目の画像。
フィルムの上下部に光カブリの影響はあるが、実用的には問題ない。

Bのフィルムの14コマ目の画像。
ベタ焼きでは真っ白だが、フィルムの選択現像効果により撮影画像が残っているため、不鮮明だが画像が現れた。